ぬくぬく座談会「愛着不全ってなに?」レポ

この度、生きづらさの根っこにあることが多い「愛着不全」について、4名のゲストをお迎えし、座談会を開催しました。
虐待、孤独死、ひきこもり、そして居場所づくり…。さまざまな現場と体験から見えてきた「愛着の欠如」がもたらす影響、そしてそこから「心の安心」を取り戻すためのヒントを、具体的な言葉で語っていただきました。
前半はゲストの方のお話を伺い、後半は参加者の皆さんで感想や思いを話し合いました。
このレポは、前半のゲストの方のお話をまとめたものです。
今、生きづらさで立ち止まっている方にとって、ご自身の「心の仕組み」を理解するきっかけになれば幸いです。
導入:「愛着」とは無条件の安心感
聞き手:佐々木まな(心理セラピスト、居場所ぬくぬく運営)
日頃、社交不安を抱える方を対象にカウンセリングをする中、「生きづらさ」の背景には、愛着の問題が深く関わっているケースが非常に多いと感じています。
そもそも「愛着」とは、子どもが養育者に対して持つ「無条件の安心感」のことです。多くの人は、幼い頃に親などから愛され、守られる中で、自然とその安心感を心の中に身につけていきます。
しかし、親から支配的に育てられた、あるいは親自身の心に余裕がなく安心できる関係を築けなかった場合、その安心感を身につけられません。これが、いわゆる「愛着不全(愛着障害)」と呼ばれる状態です。
愛着が築けたかどうかで、その後の人間関係の築き方や社会での生きやすさが大きく変わってきます。実際に、ひきこもりや依存症、人間関係に悩む方の多くに、愛着不全傾向が報告されています。
本日は、ご自身の経験や現場での視点から、愛着不全と向き合ってこられた4名のゲストの方にお話を伺いました。

1.ゲストの経験から見る愛着不全の影響
🗣️ 菅野 久美子さん(虐待サバイバー、ノンフィクション作家)
菅野さんは、幼少期に母からの虐待を受け、長年苦しい思いを抱えてこられました。
幼い頃の記憶には、水の中で溺れさせられそうになり、フッと目が覚めた瞬間に「光」を見て、生きていると確認したという、まさに生死を彷徨うような壮絶な経験があります。
少し大きくなると、母の「教育虐待」が始まります。母親が果たせなかった人生を生きなければいけない、という強いプレッシャーの中で、「母親のための人生」を生きることに苦しさを感じていたといいます。
「母親に常に視線を感じ、母親のための人生を生きるというのはすごく苦しい。(中略)アンビバレントな感情があって、めちゃくちゃ愛されたいので愛されて嬉しいんだけど、自分も苦しい、という感情の狭間があった」
愛されたいという強い気持ちと、その愛情がもたらす重圧による苦しみの間で葛藤し、最終的には「母を捨てる」という決断をもって、長年の苦しみと向き合ってこられました。
🗣️ 佐伯 太一さん(「ゴロンできる居場所」運営)
佐伯さんは、物心ついた時から「すごい不安と恐怖」を抱えていたといいます。自分が何をしたいか、何が欲しいか、という意思表示をすることに自信が持てず、常に人の顔色を窺って生きてきました。
「ちょっと何かきつく言われるだけでもうすぐ泣いてしまって、(中略)もう恐怖の塊のような状況だった」
その強い不安感の根底には、「母親が味方になり得ない、自分の中で味方だと思えない」という感覚があったと、大人になってから理解したそうです。誰も味方がいないという状況から、人に強く言われただけでも、怖くて泣いてしまうという子ども時代を過ごされました。
現在は、ご自身の経験を活かし、安心して過ごせる「ゴロンできる居場所」を運営されています。
🗣️ 佐野 靖彦さん(「生きるを考える対話講座」開催)
佐野さんは、知的障害を持つ母とヤクザな父のもとで育ち、愛着の形成に大きな困難を抱えられました。
「母からは何かをされたというよりも愛着に関しては何もされなかった印象が強いです。愛情が薄いというか、存在が薄いというか、冷たい印象しかありません。(中略)母に抱きしめられた、そういう母の体温を感じた記憶がないのです」
父の借金が原因の夜逃げや転校を繰り返し、閉鎖的な家庭環境の中で、悩みや疑問を相談できる人もなく、家の中に居場所がない孤独な幼少期を送ります。
その影響は社会人になっても続き、職場で無自覚に愛着を求め、人間関係で身を引き失敗を繰り返した結果、30回以上の転職、そしてうつやひきこもりも経験しました。
しかし、この経験の中で、佐野さんは一つの大切な境地に至ります。
「自分の生きづらさを親を含めた他者の言動や社会情勢に整理することが簡単ですが、それだけでは根本的な心の安定にはつながらないと実感します。(中略)自分自身を安全基地にしようと決め、苦心しながら少しずつ着実に安心を得ています」
自分の内面に向き合い、自分の中に「安全基地」を再構築していくというプロセスこそが、根本的な心の安定につながると強調されました。
2.現場の視点:「愛着不全」と「部屋」の深い関係
🗣️ 上東 丙唆祥さん(生前整理・遺品整理アドバイザー)
長年、遺品整理や孤独死の現場に立ち会ってきた上東さんは、「部屋と心のつながり」という現場ならではの視点から愛着不全について語ってくださいました。
散らかった部屋や物を溜め込んだ部屋には、深い理由があるといいます。
- 物をため込む:「裏切られない物に裏切られない安心感」を求めている。
- 散らかす:「心の混乱」の表れであり、同時に外部への「SOS(エスボイス)」を発しているケースが多い。
- 荒れた部屋:怠けやだらしなさからくるものではなく、その人にとっては「生き延びる工夫」であり、「安全な場所」となっている。
散らかりは、ある意味、「個人の防衛本能」なのです。
📌 サポート側が大切にすべきこと
上東さんは、愛着不全を抱える方へのサポートにおいて、最も重要なことを強調されました。
「愛着不全を抱える人に対して『片付けなさい』『捨てなさい』という言葉はNGになると思います。大切なのは、否定しないということ」
散らかりや物の多さは、その人がこれまで生きてきた上での工夫や、防衛反応としてのお部屋である、ということを理解してあげることが大切です。
「本人のタイミングを尊重」し、もし本人が「ここを少し整えてみたい」と思えたときに、「一緒に小さな一歩を踏んであげる」という関わりこそが、愛着を修復し、安心を育てることにつながります。
💡 幸運と不運は「エネルギーの循環」
最後に、上東さんは「運」についての興味深いお話を紹介してくださいました。
運の良い・悪いに関わらず、エネルギーの源は同じであり、それは「受け入れる」ということ。
「コップの中の水を、自分が含んだ不運だと思って『いつもこんなんだ』と嘆くのではなく、そのコップの水を満たすと、それが溢れ出てくる。その溢れ出てきたものが、自分を取り巻く環境(幸運)になっていく」
自分の置かれている状況を否定せず受け入れ、自分の心の中を安心感で満たしていけば、それが外側の環境(運)を変えていくというメッセージは、「生きづらさ」を抱える方々へ、希望を与えるものとなりました。
まとめ:自分の中に「安全基地」を築こう
今回の座談会を通して、愛着不全は「心の癖」であり、それは「生き延びるための懸命な工夫」の結果であるということが深く理解できました。
ゲストの皆様が共通して示唆されたのは、他者に依存したり、親や環境を責めたりするだけでなく、「自分自身を安全基地にする」という、自己肯定的なアプローチの重要性です。
これは、私が提供するカウンセリングにおける「愛着の再構築」というメソッドとも通じ合う、根本的な解決の糸口です。
今、あなたが自分の部屋が散らかっていることに悩んでいたり、人間関係で不安を抱えていたりしても、それは決して「だらしなさ」や「性格のせい」ではありません。
「心の安全基地」を求めてさまよっている、あなたの心が発するSOSかもしれません。
どうか、自分を否定せず、まずはご自身の心の声に耳を傾けてみてください。そして、上東さんがおっしゃったように、小さな一歩、例えば「テーブルの上だけを整える」といった、「自分を裏切らない小さな成功体験」から、心の安心を少しずつ育んでいきましょう。
「居場所ぬくぬく」は、あなたが安心して過ごせる居場所を、これからも提供し続けてまいります。
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